村田沙耶香「コンビニ人間」
コンビニ人間
価格:626円 |
芥川賞受賞で24か国語に翻訳。
なのにめちゃめちゃ薄いってところに興味を惹かれました。
実際170ページほどで、多分1時間ちょっとで読めちゃいました。
社会不適合者、いわゆるサイコパスの視点から書かれていて、
社会に溶け込める人(作者の言葉で「普通の人間」)からの視点で書かれると、まったく違った物語になるのだろうな、と。
普通、の人々の悪意のない感情、行動はこんなに怖いのか、と思いました。
どこか見下しているところもあるのでしょうが、
社会不適合者が、普通の人に対して、どうして?と思うのと同じように
悪意のない無邪気な感情で、どうして?と言ってしまう。
物語は、子どもの頃や大学生の頃の回想はあるものの、
初めから最後まで、主人公はまったく変わりません。
最近ミステリーを読むことが多かったわたしは、
中盤に差し掛かってくると、物語はいつ動くのだろうとうずうずし出したのですが
結局最後まで主人公が変わることはありませんでした。
主人公は、コンビニ店員として生まれた、と言っています。
途中、周囲が喜ぶからと、普通の人の殻をかぶる努力を本気で始めるのですが、
最後にはやっぱりコンビニに戻っていってしまいます。
コンビニのガラスの壁を、生まれたばかりの妹の赤ちゃんとであったガラスに例えて終わっているのも、彼女がコンビニ店員として生まれたことを強調していました。
世の中の人はすべて、普通の人を演じている、間違っていないような気がしました。
わたし達は、人として恥ずかしくないように就職する、世間の目を気にして結婚する。
それを目標としている人たちだけが、まるで立派な人であるかのように。
彼女は、自由を獲得するために一生を捧げる人の方が、苦しみに対して誠実だ。
と言っています。
世の中の人はみな多かれ少なかれ、苦しみなが現代人として生きているのだということをひしひしと感じるとともに
自分と違うということに疑問を持つことが、時に人を傷つけることを理解しないといけないと思いました。
同性同士の結婚を認める方向に動くなど、変化するこの世の中で、
選ばれるべくして選ばれたな、という一冊でした。
価格:626円 |